そして彼は言った。

これは、『誰かのための物語』だ、と。


「僕の絵はまだまだだけどさ、たくさん練習してうまくなるよ。

そしたら、もう一度華乃の物語に絵を描かせて。

そしたら、コンクールに応募しようよ。


たくさんの人に読んでもらえるようにさ」


 彼の勢いに押され気味になりながらも、
私は嬉しい気持ちを抑えられなかった。


あんなに胸が高鳴ったのは初めてだ。


「誰かのための物語……」



 彼が言ったその言葉をただ私は小声でつぶやいた。