「僕も、この物語に出会えて本当によかったよ。ありがとう」


 彼は、また笑顔を見せてくれた。


「このノート、私が持っていてもいいの?」


「もちろん。それはもともと、華乃のだよ」


「でも、もうふたりのだよ」


「ふたりの……

そうだね、そう言ってもらえるとすごく嬉しい。

でも、僕は絵を描いただけだ。

それに、ノートの表紙を見てよ」


私は、表紙に目をやる。

「【だれかの】って書かれてるでしょ?

この絵本は、誰かのものなんだ。

僕はそれでいいと思う」


彼は今まで見たこともないような真剣な表情で私を見た。

そのまっすぐな瞳に、なんだか胸がドキドキした。


「僕はこの物語を読んで勇気をもらったよ。

同じように、この物語を読んで救われる誰かが世界中にいると思うんだ」