私は、図工が終わったあとの休み時間に、彼に話しかけた。

普段は、そんなこと絶対にしないのに。

あの絵を描いた人を見つけられたという興奮からだと思うけど、そういった行動を自分から起こしていたことに私は驚いた。


「日比野くんって、絵がうまいんだね」

ノートのことは聞かなかった。

でも、私の意図は伝わるようにしたつもりだ。


「あ、ありがとう……」


彼は驚いたようにそう言ってぺこりと頭を下げると、早足で洗い場に去っていった。


私は、確信した。

やっぱりあの絵は、日比野くんのものだと。