「あれからだと、六年間だね」

「いくらなんでも、待たせすぎだよね」

「うん、笑っちゃうくらいに」


そう言って彼女は、「ふふっ」と笑った。


「その笑い方。昔から変わってなかったんだね」


華乃がおかしそうに目を細める。


「そうだよ。
それ、小学生のときもすごく好きだった。

そして、高校生の僕も、また好きになったんだ。

なんだか、クリスマスを楽しみにしてる小さい女の子みたいだと思った」


「なにそれ」


僕はもう、彼女に気持ちを隠したりしない。

昨日、そう決めたから。

「記憶を取り戻す前のことなんだけど、僕ね、夢の中で君に会ったとき、こう思ったんだ。

『この女の子が、森下さんだったらいいのにな』って」


華乃は目を丸くして、しゃきっと背筋を伸ばした。


「本当に、私だったね」


「うん、本当に。笑っちゃうよね。

…あとさ、ゆびきりしたとき。

もし自分が失ってた記憶の中にゆびきりしてるシーンがあるなら、思い出したいなって思ったんだ。
嘘じゃないよ」


「知ってるよ。

立樹くん、嘘が下手だもん……。

よかった。思い出せて」

合宿前に華乃としたゆびきりは、僕にとって二回目だったんだ。

「一回目にしたゆびきりの約束、果たせなくてごめん」

「今、果たしてくれた」

 六年間も待たせていては果たしたとは言えないと思ったけど、彼女はずっと待っていてくれたんだ。