「それから彼は、月のきれいな晩にはまた男の子に会えると思って元気に走り回るようになったの。


今までは走るのがきらいだったからぜんぜん早くならなかったけど、そうやって走り回っているうちに、うさぎは上手にかけまわれるようになったわ」



「できないって思いこんじゃってたんだね。

それも、ぼくみたい」

男の子は、だんだんうさぎが自分に見えてきました。


「それで、うさぎは男の子にまた会えたの?」


 女の子はうなずきました。


でも、その表情はけわしいものでした。


「会えたんだけどね、そのときの男の子は、オオカミにおそわれているところだったの。


男の子はしりもちをついて、にげることができなかった」


「えっ! それで、うさぎはどうしたの?」


「昔のうさぎだったら、そんなときなにもできなかったと思うけど、

そのときのうさぎはただ男の子を助けることだけを考えて、オオカミに正面から体当たりをしたの。


すごいスピードだったわ。


とつぜんの大きなちからに、オオカミには、なにが起こったのかわからなかった。

それで思わず、男の子をおいてにげていったのよ」