僕がうんともすんとも答えないうちに、橘はしゃがみこんで転がっている手ごろな小石を物色し始めている。

ちょうど木陰になっているからいいけれど、正直言って夏の屋外なんてのはやっぱり馬鹿みたいに暑い。自転車を漕いでいるときは多少の風があったけれど、こうじっとしていると暑さを遮るものが何もなく、じっとりとカッターシャツが肌にまとわりついてくる。



「石積むって、なんか意味でもあんの?」

「んー、わかんないけど、なんとなく」

「なんとなくかよ」

「ね、ほら、どっちが積めるか競争しようよー」

「いいよそういうの、暑いし」

「うわ、春瀬ってつまんないのー」



その言葉を無視して、ブツブツ言いながら石を積み始める橘の横に、ゆっくりと腰を下ろす。橘はそんな僕を見てにやりと笑ったけれど、決して橘に同調したわけじゃない。自転車を漕いでここまでやってきた疲労感をとるためだ。



「……橘ってさあ」

「ねえ」

「……人の話を遮るなよ」

「遮ったんじゃなくてかぶったのー」

「どう考えても遮っただろ」

「思い浮かんだことはすぐ言葉にしたくなっちゃう質なの」

「へえ、心底どうでもいいけど、何」

「心底どうでもいいってヒドいなー、ほんっと春瀬は春瀬だよねえ」



砂利の上に座り込むと、ずっと力を入れっぱなしだった体からすっと力が抜けていく感じがした。橘は、相変わらず石を持ち上げてはああでもないこうでもないと丁度いい形のものを捜している。



「で、何」

「……春瀬は私のこと、橘って呼ぶよねえ」