先生が来て一通りの診察を終えると、明日また検査をするけれど恐らく大丈夫だろうと言われた。


再びお母さんと二人きりになった病室。

そういえば今何時なんだろうと時計を探す。


「お母さん、今って何時?」

「ああ、そうね。えっと」

お母さんは鞄から、長年使っているガラケーを取り出した。

「もうすぐ十一時になるわよ」


十一時……。

薄いカーテンが掛かっているけど、窓の外は明るいようだ。


「あのさ……私、事故に合ったんだよね?」

「なに言ってんの、まさか覚えてないの?本当に大丈夫?もう一度先生呼んで……」

「あー、大丈夫大丈夫。ごめん、ちょっと混乱しただけだから」

「本当に?それならいいんだけど」


どうして病院にいるのか、それは覚えている。

何かが爆発したかのような大きな音も、体に受けた衝撃も。



でもあれは……夢、だったんだろうか。



「昨日の夕方、病院から連絡が来た時は心臓が飛び出るかと思ったわよ。でも命に別状はないし、怪我も酷くないって言われてようやく安心できたんだから」


夢にしては、全てがとてもリアルだった。

掴まれた腕、冗談を言う声や怒鳴り声。

頬に触れた手も、薄れていくその顔も……。




「あんたがこうやって大きな怪我もなく無事でいてくれたのは、幸野君のお陰ね……」






「……え……今、なんて……」