「よく見つけたな」

「いくは遠目にもわかるもんね、あっち来ない? 遠藤(えんどう)もいるのよ」

「え、会社のメンツ?」

「ううん、ほら私と彼、大学こっちだからさ、共通の友達多いの」

「へえ」

「…そちらは?」



健吾くんの陰に隠れるようにしてベンチに座ったままだった私を、不思議そうに見る。

私はバッグを抱いて、はっと立ち上がった。

健吾くんが、元気づけるようにそっと背中に手を置いてくれる。



「あ、この子は」

「あれ、まさか彼女かと思ったんだけど」



答えるより先に、"あおい"さんが苦笑いして続けた。



「違ったね、ごめんごめん。私、生島くんの同僚の青井美菜(みな)っていいます、こんにちは」

「あ、古浦郁実です、…こんにちは」

「なに繋がり? 地元とか?」



全然悪気がある感じじゃない。

むしろ、乱入してごめんねって空気も感じる。

なんだ、"あおい"って、苗字か、なんてほっとしつつ、私はとっさにうなずいた。



「はい、そんな感じです」



健吾くんが私を見る。


だって、仕方ないじゃない。

この状況でほかに答えよう、ないじゃない。

別に嘘ついてないし。


健吾くんがなにか言いだす前に話を繋ごうとしたら、青井さんの後ろから、「よお」と陽気に手を振りながら男の人が近づいてきた。



「遠藤、この子、いくのお友達だって、郁実ちゃん」

「なんだよめっちゃかわいいじゃん、遠藤です、どうも」



日に焼けた顔に短髪の遠藤さんが、にこっと笑いかけてくれる。

続いて健吾くんを肘で小突くと、にやっとした。



「お前、うらやましいなあ」

「変なことするんじゃないのよ、こんなかわいらしい子から見たら、あんたたちなんかおっさんなんだから」

「おっさんとか言うな」