【メリークリスマス!】

【メリークリスマス。言ってないから知らないと思うけど】

【うん?】

【今日、俺の誕生日】



ちょっと待って、待って。

冬休み初日、何の気なしに入れた連絡にそんな返事が来て、昼ご飯の準備を放り出して電話をかけた。

かけてから、あれっ、仕事中かな? と思い至る。

でもすぐにつながった。



『はい』

「あの、お誕生日おめでとう、ごめん、知らなくて」

『いいよ、言ってなかったと思うし。サンキュ』

「クリスマス生まれだったんだね」

『そう。ひとつもいいことない』



あはは、そうだろうなあ。

リビングのソファの上で、体を丸めるようにしてひざを抱え、久しぶりの声が耳元でしゃべってくれるのを聞いた。

たまにくぐもるのは、お昼ごはん中だからだろうか。



『元気?』

「うん、最近模試の順位上がってきてね、志望の学部変えたんだ」

『そっか、そういうときは絶対挑戦したほうがいいよ、がんばれ』

「ありがと、やってみる」

『そういや今日さあ、誕生日でクリスマスで、高校は冬休みなのに俺になんの予定も入ってないのを、青井にすげえ不審がられて』

「会ってないって言ってないの?」

『言ってほしかった?』



…いや、うーん、いやいや。

靖人じゃないけど、そんなのわざわざ伝えるなんて、今ちょっと隙がありますがどうしますって誘っているようなものだ。



「ううん」

『だろ。相手いない奴だけで飲み会しようって話も出て、俺も入れられてたんだけど、さすがにと思って、急きょ予定ができたふりをして断ったわけ、さっき』

「大変だね…」

『ほんとだよ。なんで俺がこんなむなしい嘘つかなきゃならねーんだよ』



健吾くんの声は、どんなに久しぶりでも、気負いがなくてちょっとけだるげで、でもめんどくさそうでもない。

私の話を聞いてくれるだけじゃなくて、健吾くんにもいつも、私に聞かせたい話があって、それが私はすごく嬉しい。



「ごめん」

『受験なんかさっさと終わらせろよ、今日なんかどこ行ってもカップル向けの呼び込みばっかだし、誘いだってあるし、ふらっと来たら俺、なにするかわかんないからな』

「私が勝手に終わらせるなんてできないの!」