「こんにちは」
「こんちは…あれ?」
頭を下げた私に、反射的ににこっと挨拶を返してから、遠藤さんは不思議そうに私をまじまじと見つめた。
「どっかで会ってるよね?」
「うわっ、この男、ナンパ始めた」
「してねーよ、ほんとに俺、どっかで」
「いくと一緒にいた子よ、バーベキューのとき会ってる」
すぐ思い出したらしく「ああ!」と顔をほころばせる。
「バイト? 偉いね、お疲れさん」
「いえ」
「いくといえばさあ、あいつ最近おかしいだろ、青井、聞いた? 高橋への指示メール、高橋違いして本部長に送ったっての」
「もうおなか痛くなるくらい笑った」
「『わかった、やっておく』とか返信来て、もう俺はダメだみたいになっててさあ。俺、今までで一番あいつ好きだわ、ここんとこ」
ふたりが笑い転げているのを見て、大丈夫かな健吾くん、と心配になった。
笑いごとっぽいので、大丈夫なんだろう…たぶん。
「いったいどうしたわけ、あいつ?」
「さあ、お姫様に振り回されてるんじゃない? ねえ、先に行って席とってきてよ」
「お姫様?」
疑問符を浮かべながらも、言われた通り遠藤さんが二階への階段を上がる。
ふたりぶんの会計を済ませると、後を追いながら美菜さんが私に目配せした。
「郁実ちゃんが大人になりすぎて、いくのことが物足りなくなったら、私にちょうだいね」
あはは。
キッチンにオーダーを通しながら、手を振って返した。
残念だけど、それはないです、きっと。
私は健吾くんとずっと一緒にいるために、成長するんですから。
一緒にいていいんだって思えるようになるために、少しは大人になろうとしているんですから。
「こんちは…あれ?」
頭を下げた私に、反射的ににこっと挨拶を返してから、遠藤さんは不思議そうに私をまじまじと見つめた。
「どっかで会ってるよね?」
「うわっ、この男、ナンパ始めた」
「してねーよ、ほんとに俺、どっかで」
「いくと一緒にいた子よ、バーベキューのとき会ってる」
すぐ思い出したらしく「ああ!」と顔をほころばせる。
「バイト? 偉いね、お疲れさん」
「いえ」
「いくといえばさあ、あいつ最近おかしいだろ、青井、聞いた? 高橋への指示メール、高橋違いして本部長に送ったっての」
「もうおなか痛くなるくらい笑った」
「『わかった、やっておく』とか返信来て、もう俺はダメだみたいになっててさあ。俺、今までで一番あいつ好きだわ、ここんとこ」
ふたりが笑い転げているのを見て、大丈夫かな健吾くん、と心配になった。
笑いごとっぽいので、大丈夫なんだろう…たぶん。
「いったいどうしたわけ、あいつ?」
「さあ、お姫様に振り回されてるんじゃない? ねえ、先に行って席とってきてよ」
「お姫様?」
疑問符を浮かべながらも、言われた通り遠藤さんが二階への階段を上がる。
ふたりぶんの会計を済ませると、後を追いながら美菜さんが私に目配せした。
「郁実ちゃんが大人になりすぎて、いくのことが物足りなくなったら、私にちょうだいね」
あはは。
キッチンにオーダーを通しながら、手を振って返した。
残念だけど、それはないです、きっと。
私は健吾くんとずっと一緒にいるために、成長するんですから。
一緒にいていいんだって思えるようになるために、少しは大人になろうとしているんですから。