「あっ、やべ」
「え?」
ホースに手を伸ばした靖人が、緊迫した声をあげる。
なんの反応もできないうちに、私は犬臭い水と泡を全身に浴びた。
ヨーが我慢できなくなって、胴震いしたのだ。
後足からしっぽまで、念入りにぶるぶると振ってから、満足そうにどこかへ行こうとするのを、靖人が首輪を掴んで引き戻す。
「こら、ちゃんと流してからだ」
「靖人、こっちもなんとかしてほしい…」
顔から脚まで、ぐっちゃぐちゃだ。
ヨーを押さえつけて水をかけていた靖人が顔を上げ、おもむろにホースをこちらに向けた。
びゃー! という変な悲鳴が出た。
シャワー状になった水が、かなりの強さで顔面を打つ。
「なにすんの!」
「なんとかしろって言うから」
「タオルとか貸してほしかったんだよ!」
「どうせその分じゃ全身洗濯だろ? 暑いんだし、気持ちいいじゃん、ほら」
「痛い、それ痛い!」
再び強烈なシャワーを浴びせられ、さすがに腕で顔をかばう。
ふいに攻撃がやみ、おそるおそる見ると、靖人がヨーをすすぎながら微笑んでいた。
「頭冷えたか」
全身から水をぽたぽた垂らして、情けなく立ち尽くす。
「冷えてるよ、もう」
「仲直りできたのか?」
Tシャツを絞ることで、即答を避けた。
「健吾くん、実家なの、今」
「へえ、どのへん?」
「県北のほう」
「じゃあ、けっこうな長距離通学だったんだな」
「そうみたい。たまにいるよね、越境の子」
「あっちのほう、高校ないもんなあ。ほい、終わったぞ」
「え?」
ホースに手を伸ばした靖人が、緊迫した声をあげる。
なんの反応もできないうちに、私は犬臭い水と泡を全身に浴びた。
ヨーが我慢できなくなって、胴震いしたのだ。
後足からしっぽまで、念入りにぶるぶると振ってから、満足そうにどこかへ行こうとするのを、靖人が首輪を掴んで引き戻す。
「こら、ちゃんと流してからだ」
「靖人、こっちもなんとかしてほしい…」
顔から脚まで、ぐっちゃぐちゃだ。
ヨーを押さえつけて水をかけていた靖人が顔を上げ、おもむろにホースをこちらに向けた。
びゃー! という変な悲鳴が出た。
シャワー状になった水が、かなりの強さで顔面を打つ。
「なにすんの!」
「なんとかしろって言うから」
「タオルとか貸してほしかったんだよ!」
「どうせその分じゃ全身洗濯だろ? 暑いんだし、気持ちいいじゃん、ほら」
「痛い、それ痛い!」
再び強烈なシャワーを浴びせられ、さすがに腕で顔をかばう。
ふいに攻撃がやみ、おそるおそる見ると、靖人がヨーをすすぎながら微笑んでいた。
「頭冷えたか」
全身から水をぽたぽた垂らして、情けなく立ち尽くす。
「冷えてるよ、もう」
「仲直りできたのか?」
Tシャツを絞ることで、即答を避けた。
「健吾くん、実家なの、今」
「へえ、どのへん?」
「県北のほう」
「じゃあ、けっこうな長距離通学だったんだな」
「そうみたい。たまにいるよね、越境の子」
「あっちのほう、高校ないもんなあ。ほい、終わったぞ」