「ねえっ、寝ないでよ」

「無茶言うな、二徹明けだっつったろ」

「話聞いてくれるんじゃなかったの?」

「そうは言ってない」

「わがまま言えって言ったじゃん!」

「聞いてやるとは言ってない」



なにそれ!

宣言通り、11時半には健吾くんは帰ってきてくれて、冷蔵庫に入れてあった小さなかわいい苺のホールケーキにろうそくを立てて、私のしつこいリクエストに負けてハッピーバースデーの歌を歌ってくれた。

知らなかった、健吾くん、歌うまい。

声がいい。

私も健吾くんも、あまりカラオケに興味がないので、そういえば行ったことがなかったんだけど、これなら健吾くんの歌を聞くためだけに行くのもいい。

そう言ったら「当然、嫌だ」と一蹴された。


そしてふたりでケーキを完食するとすぐ、健吾くんはふらふらしながら歯を磨いて、ベッドに上がってしまったのだ。

待ってよー、せっかく来たのにさみしいよ。

ていうか、これじゃ根本的なとこ、解決してなくない?

私、ちゃんと話し合いたいんだけど。



「健吾くんと会わない間、美菜さんに会ったんだよ、偶然」

「へえ」



…それだけ?

健吾くんのそばに座って、すでに枕を抱えている顔をのぞき込むと、横目がこちらを見る。



「俺にカマかけようとか10年早いんだけど、なんなの」

「そんなんじゃないよ」

「青井とはなんの話もしてねーよ、それを知りたいんならな」

「それはもう知ってる」

「あ、そうなの? じゃあなにが聞きたいんだ」



確かめたかったんだよ。

美菜さんの気持ちを、健吾くんは知ってるのかなって。

知らないんだね、まだ。



「…そりゃ残酷だよね」

「え、なんだって?」

「内緒」

「お前、やっぱり変なこと吹き込まれたんだろ」

「違うよ、女同士の秘密ができただけ」