「いや、なんかさ……ここ最近、あんまり話せなかったから。もしかして避けられてる? とかちょっとね、思ったりしてて……」


その言葉を聞いた瞬間、申し訳なくて苦しくなった。


私は彼方くんに対しても、自分のことしか考えていなかったせいで、嫌な思いをさせてしまったのだ。


彼方くんと話すと想いが隠しきれなくなりそうで、それが嫌で彼を避けていた。

でも、彼からしたら、今まで普通に話していた私から急に避けられることになったわけで。

そんなの、いい気分なわけない。


そんな簡単なことも、自分のことで一杯いっぱいだった私は気づけなかった。


「……ごめん」


謝ると、彼方くんが悲しそうな顔になった。


「え、やっぱり俺、避けられてたの?」

「あっ、ううん、違うよ! ただ、なんていうか、タイミングが悪かったっていうか……」

「そっか」


慌てて弁明すると、彼方くんがにっこりと笑顔になった。


「よかった」


甘い微笑みを浮かべて、彼は「じゃ」と教室を出ていった。


その背中を見送りながら、彼の色々な言葉を何度も反芻する。


私をかばってくれた。

そして、私が彼を避けているのを気にしてくれていた。


嬉しくて、嬉しくて、息が苦しいほどだった。