夏休みになってから、普段は校外で行われている陸上部のウォーミングアップを見られるようになって、そして知ってしまった。
彼方くんは、跳ぶ姿だけじゃなくて、走る姿もとても綺麗だということを。
スケッチブックを取り出し、鉛筆を走らせる。
夏空の下になびく、さらさらの髪。
目映い光に縁取られた、端正な横顔の輪郭。
爽やかな風を切る、ほっそりと長い腕。
力強く地面を蹴る、細く伸びやかな脚。
彼を描きたいという気持ちを抑えるのはとても難しかった。
彼方くんは練習中はこちらに来ることはないので、見られる心配はない。
だから、今だけは、思う存分、思うままに彼を描くことができた。
「……幸せ」
思わず、ぽろりと言葉がこぼれ落ちた。
しまった、と思ったけれど、ここには誰もいないし、まあいっか、と思い直す。
「幸せだ」
少し声を大きくして言ってみた。
彼方くんと話せるようになっただけでも十分すぎるほどに幸せだったのに、毎日会えるなんて。
名前を呼ばれて、毎日話せるなんて。
「幸せすぎる……」
こんな私にはもったいないほどの幸せだ。
なんだかこわいくらい。
彼方くんは、跳ぶ姿だけじゃなくて、走る姿もとても綺麗だということを。
スケッチブックを取り出し、鉛筆を走らせる。
夏空の下になびく、さらさらの髪。
目映い光に縁取られた、端正な横顔の輪郭。
爽やかな風を切る、ほっそりと長い腕。
力強く地面を蹴る、細く伸びやかな脚。
彼を描きたいという気持ちを抑えるのはとても難しかった。
彼方くんは練習中はこちらに来ることはないので、見られる心配はない。
だから、今だけは、思う存分、思うままに彼を描くことができた。
「……幸せ」
思わず、ぽろりと言葉がこぼれ落ちた。
しまった、と思ったけれど、ここには誰もいないし、まあいっか、と思い直す。
「幸せだ」
少し声を大きくして言ってみた。
彼方くんと話せるようになっただけでも十分すぎるほどに幸せだったのに、毎日会えるなんて。
名前を呼ばれて、毎日話せるなんて。
「幸せすぎる……」
こんな私にはもったいないほどの幸せだ。
なんだかこわいくらい。