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放課後、いつものように美術室に向かう。
渡り廊下を歩いているときに、グラウンド脇の通路のところに色とりどりのTシャツを着た運動部男子の集団を見つけた。
ちらりとそちらへ視線を滑らせた瞬間、その中に彼方くんがいることに気づいてしまう。
無意識のうちにしばらく見つめていたら、ふいに彼方くんが首を巡らせてこちらを向いた。
目が合ってしまいそうになり、慌てて顔を背ける。
そのまま、通りすぎようとした。
でも、
「あ、望月さん」
驚いたことに、彼方くんが私を呼んだのだ。
びっくりしすぎて足を止めてしまった。
彼方くんはこちらに視線を送っている。
やめて、見ないで、と思いながら俯いたけれど、足は動かなかった。
「今から部活?」
グラウンドのあちこちから響いてくる掛け声を突き抜けるようにして、彼方くんの声が私のもとに届いた。
なんで私なんかに話しかけてくるんだろう。
怪訝には思ったけれど、声をかけられたのに無視するわけにはいかず、私は顔をあげて「うん」と頷いた。
彼方くんは私の足が向いている方向に目を向け、「美術部だよな、確か」と言った。
私はまたも驚きで目が丸くなる。
どうして私が美術部だと知っているのだろう。