私はそっと俯き、シャープペンシルを握り締めている指をじっと見ながら、思う。


私は遥のことが大好きだ。本当に大切だ。

そして、彼方くんのことも、すごくすごく好きになってしまった。


大好きな二人が近づいて、そしてもしも付き合うようになったら、私はたぶん、とても嬉しくなる。

あんなに可愛くて優しい遥と、何事にも真剣に取り組む彼方くんは、本当にお似合いだ。

誰もが応援してしまいたくなるような、さわやかで感じのいいカップルになるだろう。

私はそれを誇らしく思うだろう。


でも、たぶん、きっと、それ以上に苦しむだろう。

彼方くんの隣に立てることを妬ましく思い、私を救ってくれた遥に嫉妬をしてしまうだろう。

そんな自分に嫌気が差すだろう。


いやだ。

私は一点の曇りもない心で、遥の恋を応援したいのに。

決して汚い感情を彼女に向けたりしたくないのに。


自分の恋心は捨てて、遥を応援したい。

協力したい。


それなのに、……ぐるぐると思考が同じ場所を旋回する。

気がついたらチャイムが鳴り、授業が終わっていた。


「遠子」


私が我に帰ったのは、ひそひそ声で私を呼ぶ遥に気づいたからだった。


「ねえ……話しかけてみようかな」


緊張と高揚を隠しきれない様子の遥。

私は何とか笑みを浮かべた。


「せっかくのチャンスなんだから、行こう」