味が好きなわけではなくて、パッケージの色の組み合わせと、イラストが醸し出す雰囲気が好きなのだ。

でも、そんな理由で飲み物を選ぶのは変だと彼女たちに笑われそうだから、何も言わない。


私たちはグラウンドの横を通って階段へ戻ろうとする。

前を歩いていた遥は、目を奪われたようにグラウンドのほうを見つめていた。


「ごめん、ちょっと見てもいい?」


遥が唐突に、恥ずかしそうに言った。

香奈がぷっと吹き出し、「いいに決まってるでしょ」と彼女の肩を叩く。


「いとしの彼方くんを見るわけね」


菜々美がからかうように言うと、遥は色白の頬を赤らめた。


「いとしの、って……」

「だって、好きなんでしょ?」


遥の顔はさらに赤くなった。


「もう、からかわないでよね!」


意地悪なんだから、と独りごちながら遥はグラウンドを取り囲むフェンスの前に立った。


その目がうっとりと校庭の片隅を見つめている。

その横顔を見ながら私は、恋する乙女の目だ、と思った。


「あー、やっぱり格好いい!」


遥はいつものように小さく叫んだ。


あのときもそうだったな、と思い出す。

私が初めての恋をして、同時に失恋した日。