押し黙っていると、先輩がふいに腕を上げ、彼方くんのほうを真っ直ぐに指した。


「そんなに好きなら、告白して来いよ」


予想もしなかった言葉に、私は目を丸くして先輩を見つめる。

冗談か、もしくは私をからかっているのかと思ったのに、彼はこの上なく真剣な表情をしていた。


「人生には終わりがあるんだぞ。時間は永遠に続くじゃないんだぞ。誰だっていつ死ぬか分からない」


「……はあ、そうですね」いきなりすぎて、間抜けな返答になってしまった。

でも、先輩は気にすることなく続ける。


「お前、このままあいつに気持ちを伝えずに死んで、後悔しないのか?」


ぴくりと肩が震えたのを自覚した。


後悔。そんなの、するに決まっている。

だって、こんなに好きなんだから。

この気持ちを伝えないまま死んでしまったら、きっと私はお墓の中で後悔する。


でも。

もしも彼に気持ちを伝えてしまったら、私はもっともっと後悔するだろう。


「――だって、大切だから」


スケッチブックの上で固く握りしめた拳を見つめながら、私は呟いた。


先輩が首を傾げる。


「大切? あいつのことが?」


違います、と私は首を横に振った。