絵の神様、と私は心の中で反芻した。
そんなことは考えたこともなかった。
いつだって真剣に絵と向き合っている深川先輩だからこその発想だと思った。
「失敗したわけでもないのに無闇に消すなんて、そんな絵に失礼なこと、するな」
私は何も答えられずに俯いた。
もうやめてほしい、この話は。
そう思ったけれど、深川先輩の言葉は止まらなかった。
「なんで、消すことになるって分かってるのに、毎日毎日描くんだよ。ていうか、そもそも、なんで消すんだよ」
先輩は心底不思議そうな声音で訊いてくる。
私はゆっくりと顔を上げ、窓の外を見た。
彼方くんが跳んでいる。
何度も見ているのに、毎日見ているのに、どうしてこんなに飽きないんだろう。
「……見られたら、困るから」
気がついたら、そう小さく呟いていた。
深川先輩が先を促すように「どういうことだよ」と言った。
「彼の絵を描いてるって知られたら、困るからです」
それ以上は言えなかった。
先輩が「わけわかんねえな」と独りごちる。
「でも、知られたら困るのに、それでもあいつのこと描いちゃうんだな」
そうだ。
こんな絵を描いているのを誰かに見られたら困ると何度も思ったのに、それでもやめられなかった。
自分でも呆れるけれど、どうしようもない。
そんなことは考えたこともなかった。
いつだって真剣に絵と向き合っている深川先輩だからこその発想だと思った。
「失敗したわけでもないのに無闇に消すなんて、そんな絵に失礼なこと、するな」
私は何も答えられずに俯いた。
もうやめてほしい、この話は。
そう思ったけれど、深川先輩の言葉は止まらなかった。
「なんで、消すことになるって分かってるのに、毎日毎日描くんだよ。ていうか、そもそも、なんで消すんだよ」
先輩は心底不思議そうな声音で訊いてくる。
私はゆっくりと顔を上げ、窓の外を見た。
彼方くんが跳んでいる。
何度も見ているのに、毎日見ているのに、どうしてこんなに飽きないんだろう。
「……見られたら、困るから」
気がついたら、そう小さく呟いていた。
深川先輩が先を促すように「どういうことだよ」と言った。
「彼の絵を描いてるって知られたら、困るからです」
それ以上は言えなかった。
先輩が「わけわかんねえな」と独りごちる。
「でも、知られたら困るのに、それでもあいつのこと描いちゃうんだな」
そうだ。
こんな絵を描いているのを誰かに見られたら困ると何度も思ったのに、それでもやめられなかった。
自分でも呆れるけれど、どうしようもない。