どうしよう、どうすればいい?


頭が真っ白で、顔はきっと真っ赤で、もしかしたら真っ青で、とにかく私は動くことも、何かを言うこともできない。


考えたって分かるわけがない。

もともと理解できていないんだから。


でも、このクラスに来たからには、そんな甘えたことは言っていられないんだ。

だから、何か答えないと。

それでもどうしようもない、分からないんだから。


ノートを見ても、教科書を見ても、黒板を見ても、何も分からない。

文字がただの記号になって私の中を素通りしていくだけで、頭には何も入ってこない。


先生は焦れたように私の反応を待っていて、生徒たちは苛々したようにこちらを見ている。


それが分かると、私の動揺はどんどん膨れあがっていった。

パニックというのは、きっとこういう状態のことを言うんだ。


「あの……ええと……」


教室の沈黙の重さに耐えきれず、そんな声をあげてみたけれど、だからといって何か答えられるわけではない。

泣きたかった。

逃げ出したかった。


今すぐ、この瞬間に、地震が起こって全てが無かったことになればいいのに。

そんな勝手な思いが沸き上がってくるほど、私は混乱していた。


そのとき。


「先生、これ、三番の公式使うってこと?」


突然、教室の後ろのほうから、場違いなほどに明るくあっけらかんとした声が聞こえてきた。