チャイムが鳴り、まだ衝撃から抜け出せずに呆然としたまま授業が始まった。


十分ほど経って先生に名前を呼ばれたときにやっと我に帰ったけれど、時すでに遅し。


「望月、この問題はどうやって解けばいい?」


先生にそう質問されて、私は自分が全く授業を聞いていなかったことに気がついてしまったのだ。


なんとか板書だけは写していたけれど、自分が書いたノートを見ても、何の話だか全く分からなかった。


「どの公式を使う?」


先生が急かすように訊いてくる。


でも、分かるわけがない。

もともと数学は苦手だし、今日は全然集中できていなかったから。


みんなの視線が痛い。

ここはαクラスだから、きっとみんな答えが分かっているのだろう。


こんな問題も分からないの? 早く答えろよ、授業が進まないだろ――そんな心の声が聞こえてくるような気がした。


「……分かりません」


授業を中断してしまうよりは、と考えて、そう答えた。

すると先生が呆れたように眉をあげる。


「こら、望月。αに上がったんだから、そんなに簡単に諦めるな。すぐに『分からない』じゃなくて、ちゃんと考えろ。考えたら分かるから」

「……すみません」


謝る声が震えてしまった。