そのとき、授業担当の先生が教室に入ってきた。
みんながざわざわと動いて自分の席につきはじめる。
その中で、彼方くんはぐるりと教室の中を見回した。
「けっこうメンバー入れ替わったな」
隣にいた男子にそう声をかけて、こちらに向かってくる。
彼方くんの席は私より後ろだ。
まさか彼が私の横を通って席に行くなんて考えてもいなかったので、緊張でどうすればいいか分からなくなった。
彼方くんの姿が近づいてくる。
俯いてやり過ごそうと思った、そのとき。
「初めてだよな?」
彼方くんに話しかけられた。
驚きのあまり頭が真っ白になり、口を半開きにしたまま硬直してしまう。
「よろしく」
彼方くんがにっこりと笑った。
私はなんとか頷くことはできたものの、言葉を出すことはできなかった。
でも、彼方くんは気にした様子もなく、穏やかな笑みを浮かべたまま後ろへ歩いて行った。
――うそだ。これ、夢?
そんな馬鹿なことを考えて、こっそりと頬をつねってみる。
もちろん、感覚はあった。
夢じゃない。
これは現実。
現実の中で私は、彼方くんから話しかけてもらった。
まさかこんなことが起こるなんて。
一度も話したことがなくて、目さえ合ったことがなかったのに、いきなり話しかけてもらえるなんて。
みんながざわざわと動いて自分の席につきはじめる。
その中で、彼方くんはぐるりと教室の中を見回した。
「けっこうメンバー入れ替わったな」
隣にいた男子にそう声をかけて、こちらに向かってくる。
彼方くんの席は私より後ろだ。
まさか彼が私の横を通って席に行くなんて考えてもいなかったので、緊張でどうすればいいか分からなくなった。
彼方くんの姿が近づいてくる。
俯いてやり過ごそうと思った、そのとき。
「初めてだよな?」
彼方くんに話しかけられた。
驚きのあまり頭が真っ白になり、口を半開きにしたまま硬直してしまう。
「よろしく」
彼方くんがにっこりと笑った。
私はなんとか頷くことはできたものの、言葉を出すことはできなかった。
でも、彼方くんは気にした様子もなく、穏やかな笑みを浮かべたまま後ろへ歩いて行った。
――うそだ。これ、夢?
そんな馬鹿なことを考えて、こっそりと頬をつねってみる。
もちろん、感覚はあった。
夢じゃない。
これは現実。
現実の中で私は、彼方くんから話しかけてもらった。
まさかこんなことが起こるなんて。
一度も話したことがなくて、目さえ合ったことがなかったのに、いきなり話しかけてもらえるなんて。