登校してきた生徒で賑わう校門。

人で溢れ返る休み時間の廊下。

たくさんの生徒が動き回っている体育館。

昼休みの購買の前。

美術室から見たグラウンド。


どこにいたって、どれだけたくさんの人がいたって、私は彼を見つけることができる。

見つけてしまう。


たぶん、誰よりも早く。


だから今日も、顔は上げないつもりだったのに、私の目はやっぱりいち早く彼の姿をとらえてしまった。


彼方くんが教室に入ってくると、すぐに二、三人の男子が近づいて声をかける。

何かふざけたようなことを言って声を弾ませた彼らに答えて、彼方くんは楽しそうに笑顔を浮かべた。


近くにいる女子の数人は彼らのほうをちらちらと見ている。


華やかで明るい雰囲気の彼らは、たぶんA組の中心メンバーだ。

つくづく不思議だけれど、自分のクラスではなくても、一目見ただけで、そのクラスの一軍、二軍というか、勢力図のようなものは一瞬で分かってしまう。


彼方くんは決して派手な格好をしているわけではないし、制服を着崩したり髪を染めたりもしていない。

でも、勉強ができて、陸上部のエースと呼ばれていて、誰とでも臆することなく話せる明るい性格で、彼は紛れもなく生まれながらの一軍だ。

私みたいに、何かの間違いで一軍に入ってしまった偽者とは違う。