やばい、と思った。


これは危ない。

彼方くんと同じクラスになるなんて。

同じ教室で、同じ授業を受けることになるなんて。


そういえば彼方くんは、入試の成績が良かった生徒が集められたA組だ。

ということは、αクラスになれば彼と同じ授業を受けることになってしまうと、少し考えればわかったはずなのに。


「遠子?」


驚きのあまり動きを止めてしまった私を、遥が不思議そうに覗きこんできた。


「大丈夫? なんかぼうっとしてない?」


心配そうな響きの声に、私は首を横に振る。


「ううん、なんでもない。大丈夫」

「そう? 無理しないでね」


遥がにこっと笑いかけてくれた。


とろけそうに甘い、可愛い笑顔。

見ているだけで幸せになるくらい。


ずっとこの笑顔でいてほしい、と思った。

悲しい顔や苦しい顔なんて、彼女にだけはしてほしくない。


だから、気づかないで。

どうか、私のこの想いに気づかないで。


彼方くんと同じクラスになったことを喜んでしまった私に、どうか気づかないで。


あなただけは、傷つけたくない。