紛れもなく私の最高傑作だった。


深川先輩からもらった言葉を思い出す。



『本当に描きたいものを描けば、描きたくてたまらないものを描けば、その絵は絶対に、最高の出来になる』



本当だ。


描きたいものを描くと、思いっきり描くと、あんなにも楽しくて、そしてこんなにも愛おしいのだ。



「私から見たら、彼方くんは、こういうふうに見えたの。きらきらしてて、綺麗で、そのまま空の向こうに飛んでいってしまいそうなくらい、どこまでも永遠に飛べそうなくらい」

「……うん」

「なんて楽しそうに跳ぶんだろう、って思った。目を奪われて見つめてて、いつも見てて……そしたら」


やっぱり素直に言うのは難しくて、恥ずかしくて、言葉が出てこなくなってしまった。


「……あのね、ある先輩から、言われたんだ。『そんなに好きなら、堂々と描けよ』って。だから、描いたの」


好きなものを、思いっきり描いてみたかった。


だから、きみを描いた。


伝わるかな、この想いが。


「……好きなものを?」


彼方くんがちらりと私を見る。


私は笑って、


「うん、好きなものを」


と答えた。


「好きなもの」

「そう」


私は指をたてて彼方くんを指した。


「好きなものを、描いたの」