遥は「うん」と絵を見たまま言った。


「私も、ずっと、ずっと前から、彼方くんのこと、好きだった」

「うん」

「だから、嬉しかった。でも……」


そのとき、遥がすっとこちらを向いた。


悲しそうな笑みを浮かべていた。


「……私に気をつかって断るとか、そういうのは、やめてね」


どきりとした。

見たことのない声、見たことのない表情だった。


「すごく情けない気持ちになるから……」


笑っているけれど、笑っていないのだと、分かる。

そんな苦しそうな顔を遥はしていた。


「……本当はね、どこかで分かってたの。遠子が彼方くんのこと、好きなんじゃないかって」

「え……」

「なんとなく、だけど。分かるよ、小さいときから知ってるんだから。様子がおかしいことくらい」


驚いて声も出せなかった。

うまく隠せていると、思っていたのに。


「なんとなく、彼方くんのことよく見てる気がしたし。逆に変に目そらしたりもしてる気がしたし」

「………」

「あと、私が彼方くんの話をすると、なんか、受け答えがおかしかった」


遥にはかなわない。

遥はあっけらかんとしているようで、本当はとてもよく周りを見ている。


そのことを、誰よりも私は知っていたはずなのに。