小さい頃から、自分の気持ちを言葉にするのが苦手だった。


正直な気持ちを言おうとすると、まわりの人の顔色とか、機嫌とか、その場の空気とか、色んなものが気になってしまって、いつの間にか言葉を見失ってしまったのだ。


小学生くらいになると、まわりの大人たちから『遠子ちゃんは大人しいね』、『人見知りだね』と言われるようになった。

そしたら、そういうレッテルを貼られてしまったら、本当に自分はそういう人間なんだという気がしてきて、楽しくてもはしゃぐことができなくなり、見知らぬ人に声をかけるのが躊躇われるようになった。


まわりから決められたキャラクターをきちんと演じないといけない、という気がしていたのだ。


はじめは苦しかったけれど、徐々に慣れていった。

そうしたら、本当に誰にも本心を言えなくなっていって、言わずに隠しているうちに、自分の本心がどんなものなのかさえ、分からなくなっていった。


流されて流されて、まわりに合わせて、私は生きてきたのだ。


でも、それではだめだと、気がついた。

自分の気持ちはちゃんと言葉にしないと、誰にも分かってもらえないのだ。


誰かに合わせても、やっぱり自分の心というものは確かにあって、

それを押し込めて隠してばかりでは、いつか心が壊れてしまう。


言いたいこと、言うべきことは、言わなきゃいけない。