大きく曲がっていたポールが、ほとんど真っ直ぐに、地面と垂直に近づいたとき、彼方くんがポールから手を離した。


重力にまけて地面へと落下していくポールとは反対に、彼方くんの身体は真っ逆さまになってぐんっと上昇する。

綺麗に伸びきった足から空へ落ちていくように、空へと昇っていく。


高みに昇りきったとき、向こう側を向いていた彼方くんの身体がくるりと反転して、彼がこちら側を向いた。


青空を背負った彼が、空の上から私を見下ろしている。


小さく微笑んだ、ような気がした。

だから私も微笑み返した。


彼方くんが空を横切るようにバーを越えて、ひらりと反対側へ落ちていく。


それを私はずっと目で追っていた。


彼が跳んだのはほんの一瞬のはずなのに、私には永遠のように長く感じられた。



目を閉じる。


瞼の裏に、彼の姿をリプレイする。


棒高跳びのために鍛え上げられた、毎日毎日何十回も跳び続けた、

空を舞うために無駄ひとつない綺麗な姿。


彼がどれほど真剣に棒高跳びと向かい合ってきたか、その姿を見れば分かった。


だから彼方くんが跳ぶ姿はこんなにも美しいんだ、と私は思った。

彼がひたむきに頑張り続けてきた成果がそこに凝縮されているから、彼は綺麗なんだ。


そして、私はそれを好きになったんだ。