「遠子! 大丈夫か!?」


――ほら。

今だって、喜んでしまっている。


「苦しい? 保健室行くか?」

「……彼方くん。どうして……ここに」


自分の好きな人が、他の女の子の告白を断って、自分のもとに息せききって駆けつけてくれたことを、心から嬉しいと思ってしまっている。


彼方くんは心配そうに眉根を寄せて私を覗きこんできた。


「遠子が腹が痛いって言ってどこかに行っちゃったって、今さっき長谷に聞いて。心配で……」

「探してくれたの?」

「うん、どっかで倒れてたらどうしようとか思って」


まだしゃがみこんだままの私の横に腰をおろし、彼方くんは私の肩をそっと抱いた。


「きつかったら、保健室行こう」

「……ううん、大丈夫。仮病だから」

「へ? 仮病?」


彼方くんが不思議そうな首をかしげた。


「うん。ごめんね、心配かけて。ちょっと事情があって、仮病使っちゃったの。本当にごめん」


そう言って頭を下げると、彼方くんはどっと地面に仰向けになって倒れた。


「なんだ、仮病かー。よかった、めっちゃはらはらしたし」


彼はにこにこと笑いながら言った。

その笑顔が、私の胸を熱くする。