見てはいけないものを見てしまった、という気がした。

そのまま踵を返して戻ろうと思った。


なのに、近くの枝に肩が触れてしまって、音を立ててしまった。


弾かれたように顔をあげた遥の、泣きはらした目と目があってしまった。


「……遠子」

「遥……大丈夫?」


遥は小さく笑って、「ふられちゃった」と冗談のように軽く言った。


でも、その顔を見れば、その声を聞けば、かなりのショックを受けていることは分かった。


私は何も言わずに彼女に近づき、隣に寄り添う。


「……最初に入ったお化け屋敷でね、けっこういい感じになったから、今日告白しちゃおうって決めてて」

「うん」

「でも、途中から彼方くん、なんか落ち着かない感じになっちゃって」

「……うん」

「だからね、このままチャンスを逃したくないなって思って、思いきって、好きですって言っちゃったの。付き合ってくださいって」


遥はそこでふうっと息を吐き出した。


「そしたらね、ごめんって。即答。即答だよ、ひどくない?」


遥はまたくすくすと笑う。

でも、今にも泣き出しそうな顔だった。


そして、それを聞いて、それを見て、私は――自分が確かに心のどこかで喜んでいるのを感じた。

彼方くんが遥の告白を断ったことを、嬉しいと、感じている自分の心の動きを感じた、