次の日も英語の授業があった。


休み時間のあいだは一度も顔をあげず、絶対に彼方くんと目を合わせないようにしていた。

授業が始まって、やっと顔を上げる。


すると、彼方くんと遥の姿が目に入って、ものすごくつらくなった。

しかも、前の黒板の端には、昨日の相合い傘がうっすらと浮かび上がっていた。


ちゃんと消したつもりだったのに、消しきれずに跡が残っているのだ。


文字が読み取れるほどではないからよかったけれど、授業の間じゅう、気になって気になって仕方がなくて、落ち着かなかった。


終わりチャイムと同時にトイレに駆け込んで、次の授業が始まるぎりぎりまで外に出なかった。


「遠子、大丈夫? なんか調子悪そうだけど」


遥が心配そうに訊いてきてくれたけれど、私はなんとか「平気だよ」と返した。


「それより、彼方くんとは、どう?」


そう訊ねると遥が途端に嬉しそうな顔になる。


「昨日、夜にライン送ってみたら、ちゃんと返事もらえた。五回くらいやりとりして、おやすみって終わったの」

「そうなんだ。すごい進展だね、やったね」


白々しくないか心配だったけれど、嬉しそうな遥には気づかれなくて済んだ。