嵐の前の静けさみたいな、戦争の前のお祭りみたいな。
平和な数日間があっという間に過ぎていった。
あたしたちは変わらず学校では五人で行動し、時々増岡たちのグループと一緒になって騒いだ。噂話に花を咲かせたり、放課後にゲーセンに行ったりクレープを食べたり、ふざけ合ったり。
ほとんど以前と変わらす、ただひとつ違ってしまったのはあたしたちが文乃をいじめなくなったこと、エリサのいない場面では盛んにエリサの悪口を言い合うこと、そしてエリサが前と比べてぐっとおとなしくなったこと。
真っ赤な薔薇の花みたいな美少女の存在感は消えて、エリサはほとんどみんなの会話に加わらず、輪の端っこで相槌を打ったり、合わせて笑ったり、そうでなきゃマンガを読むか携帯をいじるかしていた。
その顔は相変わらずきれいだったけどあたしたちと一緒にいてもその目はどこか遠い、別のところをいつもぼんやり眺めてて、陰で明菜や増岡たちにけちょんけんちょんに言われてるのにもグループの中での自分の立ち位置が変わったのにも、どこ吹く風って感じだった。
エリサは案外素直に諦めたんだろうか。「女王様」でなくなったことを素早く悟り、自分の運命を甘んじて受け入れることにしたんだろうか。そうだったらすべては平和のうちに解決したのかもしれない。
犬のフン事件から五日経った放課後、あたしたちはエリサに呼び出された。帰りのホームルームの直後、明菜、和紗、桃子、そしてあたし、四人の携帯にまったく同じ文面のメールが届いた。
『第二校舎の一階、東階段の横のトイレに来て! 面白いもん見せたげるー。絶対、ゼッタイ来てね♪』
「最後の♪がすんごい不気味なんだけど」
同じ文面を表示した四つの携帯を突き合わせながら、明菜がボソリと言った。三人とも小さく頷いた。ホームルームが終わってなんとなくすぐ帰れずに四人でしゃべってたら、一斉に携帯が鳴ったのだ。気が付いたら教室にはエリサの姿はなく、ついでに文乃もいない。誰もはっきり口にしなかったけど、みんな悪い予感に怯えてた。
平和な数日間があっという間に過ぎていった。
あたしたちは変わらず学校では五人で行動し、時々増岡たちのグループと一緒になって騒いだ。噂話に花を咲かせたり、放課後にゲーセンに行ったりクレープを食べたり、ふざけ合ったり。
ほとんど以前と変わらす、ただひとつ違ってしまったのはあたしたちが文乃をいじめなくなったこと、エリサのいない場面では盛んにエリサの悪口を言い合うこと、そしてエリサが前と比べてぐっとおとなしくなったこと。
真っ赤な薔薇の花みたいな美少女の存在感は消えて、エリサはほとんどみんなの会話に加わらず、輪の端っこで相槌を打ったり、合わせて笑ったり、そうでなきゃマンガを読むか携帯をいじるかしていた。
その顔は相変わらずきれいだったけどあたしたちと一緒にいてもその目はどこか遠い、別のところをいつもぼんやり眺めてて、陰で明菜や増岡たちにけちょんけんちょんに言われてるのにもグループの中での自分の立ち位置が変わったのにも、どこ吹く風って感じだった。
エリサは案外素直に諦めたんだろうか。「女王様」でなくなったことを素早く悟り、自分の運命を甘んじて受け入れることにしたんだろうか。そうだったらすべては平和のうちに解決したのかもしれない。
犬のフン事件から五日経った放課後、あたしたちはエリサに呼び出された。帰りのホームルームの直後、明菜、和紗、桃子、そしてあたし、四人の携帯にまったく同じ文面のメールが届いた。
『第二校舎の一階、東階段の横のトイレに来て! 面白いもん見せたげるー。絶対、ゼッタイ来てね♪』
「最後の♪がすんごい不気味なんだけど」
同じ文面を表示した四つの携帯を突き合わせながら、明菜がボソリと言った。三人とも小さく頷いた。ホームルームが終わってなんとなくすぐ帰れずに四人でしゃべってたら、一斉に携帯が鳴ったのだ。気が付いたら教室にはエリサの姿はなく、ついでに文乃もいない。誰もはっきり口にしなかったけど、みんな悪い予感に怯えてた。