小三の学芸会の時の話。うちのクラスは劇を発表することになって、演目は白雪姫。主役候補として名前が挙がったのはクラスで一番可愛いエリサとあともう一人、取り立てて可愛くはないものの児童劇団に入ってて演技が抜群に上手い女の子だった。
エリサは自信なさそうに「あたしが主役なんて、自信なぁい。絶対無理だよー」って苦笑いしてたけど、あたしは知ってる。エリサは本当は白雪姫をやりたくてやりたくてしょうがなかったんだ。
クラスはエリサを推す派ともう一人の女の子を推す派で分かれてちょっと揉めた挙句、最終的には投票になり二票の差でエリサが負けた。エリサに入れなかった子たちは「自信ないって言う人に無理にやらせることない」って後で言ってたっけ。ぶりっ子な謙遜があだになったんだ。
結局、あたしもエリサも森の動物の役をやることになった。台詞はエリサが二言、あたしが一言だけの、本当に簡単な役。学芸会当日、エリサは風邪でもひいてるのかと思うほど元気がなくて普段はほとんど話もしない白雪姫役の子の見事な演技を、舞台袖からじっと見てた。「本当は白雪姫、やりたかったんだ」なんて一言も言わなかったけど。
でも劇が終わって、控え室代わりになってた教室に他の保護者に混じってエリサのお兄ちゃんがやって来た時、ついにエリサは爆発した。エリサのお兄ちゃんはその時既に中学三年生で、背が高くて手も足もすらっとしてて、小三のちびから見たら立派な大人だった。
顔もテレビに出てるアイドルみたいに恰好よくて、あたしも教室にいた他の女の子たちも思わずちょっとドキドキしてしまったけど、そんなお兄ちゃんに「エリサ」って声をかけられ振り向いたエリサは固まってた。頬を引きつらせかっと目を見開いて、唇を青くして。
エリサは自信なさそうに「あたしが主役なんて、自信なぁい。絶対無理だよー」って苦笑いしてたけど、あたしは知ってる。エリサは本当は白雪姫をやりたくてやりたくてしょうがなかったんだ。
クラスはエリサを推す派ともう一人の女の子を推す派で分かれてちょっと揉めた挙句、最終的には投票になり二票の差でエリサが負けた。エリサに入れなかった子たちは「自信ないって言う人に無理にやらせることない」って後で言ってたっけ。ぶりっ子な謙遜があだになったんだ。
結局、あたしもエリサも森の動物の役をやることになった。台詞はエリサが二言、あたしが一言だけの、本当に簡単な役。学芸会当日、エリサは風邪でもひいてるのかと思うほど元気がなくて普段はほとんど話もしない白雪姫役の子の見事な演技を、舞台袖からじっと見てた。「本当は白雪姫、やりたかったんだ」なんて一言も言わなかったけど。
でも劇が終わって、控え室代わりになってた教室に他の保護者に混じってエリサのお兄ちゃんがやって来た時、ついにエリサは爆発した。エリサのお兄ちゃんはその時既に中学三年生で、背が高くて手も足もすらっとしてて、小三のちびから見たら立派な大人だった。
顔もテレビに出てるアイドルみたいに恰好よくて、あたしも教室にいた他の女の子たちも思わずちょっとドキドキしてしまったけど、そんなお兄ちゃんに「エリサ」って声をかけられ振り向いたエリサは固まってた。頬を引きつらせかっと目を見開いて、唇を青くして。