五人グループのはずだけど、時々こんなふうに三人グループと二人グループに分かれてしまうことがある。しょうがない、明菜たち三人は一年の頃から同じクラスの同じグループで仲が良かったし、小学校からずっと一緒のあたしとエリサの間には他のみんなとは共有できない話題もあるし。
明菜たち三人とあたし&エリサの間には埋めがたい距離が存在している。その距離を埋めてくれるもののひとつが文乃いじめの面白さを分かち合うことで、そのいじめがうまくいってないんだから、エリサが苛立つのもまぁ、わかる。
エリサはこれまでずっとそうだったように、明菜たちに「エリサ、すごぉい」って言ってほしくて思ってほしくて、しょうがないのだ。
「ねぇね、エリサ、そういえば中沢くんは? 今日とか、一緒に帰んないのー?」
イライラを忘れさせてあげようと、わざとまったく関係ない話題を出した。大好きな中沢くんのノロケ話をたっぷりさせてあげれば、エリサも機嫌が直るだろう、って踏んでた。
ところが白い横顔は予想外の反応を示した。さっと頬が引きつり、青ざめてしまう。
「付き合ってるからって毎日一緒に帰るわけじゃないよ。あたしはあたしで鞠子やみんなとこうして友だち付き合いがあるし栄嗣は栄嗣で男の付き合いってやつがあるし」
言い訳がましい早口。半年前、付き合いたての頃は好奇心いっぱいの周りの視線をはねのけ毎日一緒に帰ってて、あたしを捕まえてはこの前の日曜日は二人でどこそこに行っただの中沢くんからこんなに嬉しいことを言われただのとノロけられ、毎日幸せいっぱいほくほく顔のエリサに嫌気がさすほどだったのに。
「ふーん、そんなもん? 前はそんなんじゃなかったじゃん。夏休みだってほぼ毎日会ってたんでしょ」
「夏休みは夏休み、今は今だよ」
「何それ。ねぇエリサ、もしかして中沢くんと上手くいってない?」
「……そういうの、余計なお世話だから」
低い声が返ってきて、それきり押し黙ってしまう。言い過ぎた、失敗したと思った。どうやら図星だったらしい。
体育の時、”二人だけの秘密”なんてニコニコしてたエリサを思い出す。明菜たちの前ではああんなふうに上手く切り抜けておいて、実のところはまだ中沢くんとなんともなくてもちろん処女で、それは二人の間が上手くいってないことの結果なのかもしれない。だけどそんな事実を素直に認められず明菜や桃子に遅れを取ってることが恥ずかしくてしょうがないエリサは、”二人だけの秘密”ってうまい言葉を添えて意味深に笑ったんだろう。
エリサはいつもみんなによく思われたい見栄っ張りだ。
明菜たち三人とあたし&エリサの間には埋めがたい距離が存在している。その距離を埋めてくれるもののひとつが文乃いじめの面白さを分かち合うことで、そのいじめがうまくいってないんだから、エリサが苛立つのもまぁ、わかる。
エリサはこれまでずっとそうだったように、明菜たちに「エリサ、すごぉい」って言ってほしくて思ってほしくて、しょうがないのだ。
「ねぇね、エリサ、そういえば中沢くんは? 今日とか、一緒に帰んないのー?」
イライラを忘れさせてあげようと、わざとまったく関係ない話題を出した。大好きな中沢くんのノロケ話をたっぷりさせてあげれば、エリサも機嫌が直るだろう、って踏んでた。
ところが白い横顔は予想外の反応を示した。さっと頬が引きつり、青ざめてしまう。
「付き合ってるからって毎日一緒に帰るわけじゃないよ。あたしはあたしで鞠子やみんなとこうして友だち付き合いがあるし栄嗣は栄嗣で男の付き合いってやつがあるし」
言い訳がましい早口。半年前、付き合いたての頃は好奇心いっぱいの周りの視線をはねのけ毎日一緒に帰ってて、あたしを捕まえてはこの前の日曜日は二人でどこそこに行っただの中沢くんからこんなに嬉しいことを言われただのとノロけられ、毎日幸せいっぱいほくほく顔のエリサに嫌気がさすほどだったのに。
「ふーん、そんなもん? 前はそんなんじゃなかったじゃん。夏休みだってほぼ毎日会ってたんでしょ」
「夏休みは夏休み、今は今だよ」
「何それ。ねぇエリサ、もしかして中沢くんと上手くいってない?」
「……そういうの、余計なお世話だから」
低い声が返ってきて、それきり押し黙ってしまう。言い過ぎた、失敗したと思った。どうやら図星だったらしい。
体育の時、”二人だけの秘密”なんてニコニコしてたエリサを思い出す。明菜たちの前ではああんなふうに上手く切り抜けておいて、実のところはまだ中沢くんとなんともなくてもちろん処女で、それは二人の間が上手くいってないことの結果なのかもしれない。だけどそんな事実を素直に認められず明菜や桃子に遅れを取ってることが恥ずかしくてしょうがないエリサは、”二人だけの秘密”ってうまい言葉を添えて意味深に笑ったんだろう。
エリサはいつもみんなによく思われたい見栄っ張りだ。