もちろん溝口先生が周防さんたちをほっとくはずもなく、さっきよりも鋭い声を投げる。


「おいそこ、うるさいぞ。実験が済んだらさっさとレポート書くっ。このレポート、成績つけるときに使うからなー」


 それでようやく少しおとなしくなり、みんな机に向かってカリカリとシャープペンを走らせ出した。郁子が感心半分、呆れ半分の顔で言う。


「まったく年がら年中、よくあんなうるさくしてられるよね、周防さんたち。エネルギーありあまり過ぎでしょ」


 ほんとほんと、と潮美と美織が頷き、自分たちも書きかけのレポートに目を落とした。


 たしかに周防さんたちはいつもうるさい。それはわたしと違って、目立つことを厭わないから。目立って当然の美貌と存在感があることを、自分でよくわかっているんだろう。周防さんも三川さんも横井さんも半田さんも相原さんも、そういう人たちだ。


 遠い実験台でシャープペンの端っこを咥え、物憂げな横顔でレポートに向かってる周防さんを見やる。中二なのにほんのりアーモンド色に染めてコテで巻いた髪、化粧を施した大人っぽい顔、ブラウスの胸を突き破りそうな胸のふくらみ。周防さんはわたしにないもの、わたしが欲しいものを持ちすぎている。だからわたしはやっぱり、周防さんが怖い。