「いい加減にしてよ。そんなに食べられたくないんなら、さっさと自分で食べちゃえばよかったでしょうが」


「なんでぇ、未歩が悪いの?」


「未歩が悪いのじゃなくて未歩も悪いの。あんたって意気地なさ過ぎ。ぼうっとしてるからすぐ真衣に何か取られるし、ぎゃーぎゃー喚いてばっかでお姉ちゃんらしくビシッと叱んないから真衣も付け上がるんじゃない」


「未歩、悪くないもぉん」


 未歩の丸い目がもっと丸く膨らむ。やばい、泣かれる。慌ててなだめようとしたら未歩がばっと顔を覆って、その肘がミルクの入ってたマグカップにぶち当たった。


がちゃん、とミルクはマグカップごと床に落ち、白い水溜りが広がる。大惨事。


 一瞬の沈黙の後、振り向いたお母さんが怒鳴った。


「もう、あんたたち何やってるのこの忙しい時に!! お母さんもうお化粧しないといけないから、亜沙実片付けときなさい」


 なんであたしが、という言葉はお母さんが発する威圧感に阻まれた。


悪くないもぉん、ってあたしだって言いたいのに。火がついたように泣き出す未歩と何食わぬ顔でオムレツを食べている真衣に、ムクムクと殺意が湧いてきた。