「河野さぁ、体育祭ん時に砂場で暴れてたよねー」

 明菜が思い出したように言う。えっ何それ、と和紗がまた眉をひそめる。

「あの人、暴れたりとかそういう人なの? 時々変な声出して廊下走ってたりとかしてたけど、乱暴なことするようには見えなかった」

「そりゃショーガイシャだもん。暴れたりとかもすんじゃない?」

 今まで黙ってた鞠子が冷ややかに言った。障がい者という言い方の他に表しようがないのだろうけれど、今の鞠子の口調はただの単語じゃなくて悪口に聞こえた。

「暴れてたっつっても、砂の上で裸で転げまわってたんだよ。男子たちが面白がって砂かけたりとかして、先生が来て大騒ぎになったんだってさ」

「明菜、それマジ? ほんとキモいんだけどー」

 桃子の語尾がやたらと長く伸びる。和紗のひそめた眉の角度がより深くなる。

「裸って……やだもう。あんな人の体見たくない。わたし、目撃しなくてよかった」

「和紗には刺激強すぎたかもー。最後のほうほとんどフルチンだったしさ」

「えっ何、じゃあ明菜見たんだ? あいつの」

 鞠子が言って明菜が頷く。和紗と桃子がいやだーキモいーともう本日何回目かわからなくなったその言葉をハモらせる。