バカにしてる。たしかにそう言われたらそうなのかもしれない、だって化粧や髪型を工夫していつもかわいくしていたいとか男の子を好きだとか付き合いたいとかいう、鞠子や明菜たちにとってはとてもとても大切なこと、わたしにはくだらないものにしか思えないしそういう気持ちが表に出ていたら不愉快になられるのも無理はないだろう。でも調子には乗ってない。

派手でクラスの中心グループで見目のいい男子たちと仲がいい明菜グループの一員になれたからって、そのことを喜んでるわけでも誇ってもいない。むしろ未だに戸惑いだらけだしみんなといても居心地が悪い。白鳥の群れに迷いこんだ醜いあひるの子みたいに、一人ぼっちでいた時よりいっそう深い孤独に打ちのめされている。

 けれど、鞠子にはそんなふうに見えていたんだ。

 どうしてこんなに傷ついてしまうんだろう。鞠子のぎろり、が目に突き刺さって心臓に染みて、体を侵食していく痛みがいつまでも消えないんだろう。そうか、結局わたしは嬉しかったんだ。調子に乗ってるわけじゃないけど、嬉しかった。

話は合わなくても隣に誰かがいること、しゃべりかけてもらえること、愛想笑いとはいえ笑いかけてもらえること、放課後一人ぼっちじゃなくて一緒に帰る人がいること。こんなくだらない馬鹿な人たち、と思う一方で、一人じゃなくなったことが嬉しかった。だってわたしは本当にずっとずっと一人ぼっちだったから。一人ぼっちで見下され蔑まれ排斥されて生きてきたから。

 でも一人でなくなったっていうのは思い違いで、わたしはやっぱり今まで以上に孤独で、ほんとの友だちだって認められてないのはわかってたけど改めて言われたらやっぱり苦しくて。心臓に染みた悪意が血液に乗って、痛みになってじんじんと全身を駆け巡る。いつも人間関係を作れないまま名前すら覚えてないような人たちからいじめられてきて、こういう傷つき方は初めてだった。