女子にこんなハードな肉体労働を押し付けるなんて、さすが学校いち怖い教師。うんざりしてため息をつきたくなったけれど反抗する度胸なんかない。わたしと鞠子は黙々と作業を進めた。

終業式を一週間後に控えた十二月半ばの寒い日にも関わらず、大荷物を抱えて体育倉庫とゴミ置き場とを行き来するうちに汗が噴き出し、体操着がじっとり肌に貼り付く。何度目かの往復でグラウンドを走らされている明菜たちを目撃し、機嫌がいいのかこちらに向かって手を振られた。しゃべりながらもおしゃべりに忙しそうな明菜たちは罰の真っ最中にも関わらずなかなか楽しそうだ。こっちはちっとも楽しくないけど。

「高橋さん。こっち持って」

 普通のハードルの二倍重たい錆びたハードルを運んで体育倉庫に戻ってくると、鞠子が仏頂面でバレーボールの入った籠の取っ手を握っていた。これも錆だらけでボールは土まみれ、潰れたり中身がはみ出してるのもある。一メートル以上の高さはある大きな鉄製の籠は外側に二か所取っ手がついていて、鞠子が片方、もう片方をわたしが掴んで持ち上げる。女の子一人じゃまず抱えられない重さだ。二人で持っても結構しんどい。

 籠を挟んで歩く二人の間に冷たい沈黙がある。この人がわたしに対していい感情を持っていないことにはとっくに気付いてたけれど、二人きりでこうもだんまりが続くとさすがに気まずい。いつもみたいに明菜たちが一緒なら平気なのに。

「あんた、あたしたちのことバカにしてるっしょ」

 独り言のような平坦な声で鞠子が言う。へ、と間抜けな声が出てボールの山の向こうの鞠子を見るとさっきと変わらない相変わらずの仏頂面。

「バカにしてるよね。化粧とかスカート短くするとか、不良だって見下してるくせに。知ってんだよ、あたしたちがいつも話してる傍でよくこんなくだらないことで盛り上がれるなぁとか思ってんの」