明菜たちはいつも集団でトイレへ行く。横並びになってぞろぞろと廊下を行き洗面台の前にずらりと陣取り、化粧の仕方だの髪の巻き方だのをああだこうだと延々しゃべっている。仮にも「仲良しグループ」の一員であるわたしもトイレに誘われるんだけれど、見た目にまったく気を遣わないわたしにとってすることもなくぼんやりするしかないこの時間は、たまらなく苦痛だ。

時々他のクラスの子がトイレに入ってきて、仲良し五人組の中で一人だけ毛色の違うわたしに「何、あの子? あんなに地味でブスなのになんで明菜とかといるの?」みたいな視線を突き刺すのも嫌だし。

 だから自分がトイレに行きたい時は必ず一人で行く。明菜たちはそれについて別に何も言わない。きっと興味すらない。

 その昼休みも誰も伴わずトイレに行った後、人気のない廊下の隅っこで係の仕事なのかプリントの束を重そうに抱えて歩く希重とかち合った。希重が小柄だから、プリントの束がやたら大きく見える。まずいことに正面からばっちり視線がぶつかる。それでも無視して歩き出そうとするけど、希重にセーラー服の腰の辺りを掴まれて止まらざるをえない。

「ごめん……」

ぎこちなく笑いながら手を引っ込め、バランスを崩しそうになっているプリントの山を抱え直す希重。腫れ物に触るような笑顔が癇に障る。

 そんな顔でしかわたしに接することができないのなら話しかけてこないでほしい。

「それ、ちゃんと持ってないと落とすよ」
「うん、そうだね、気を付ける……」
「……」
「……」
「用ないなら行くけど」
「待って」

 歩き出そうとすると切羽詰った声に呼び止められる。