仮にも「仲良しグループ」の一員である以上、話の輪に入れないとはいえ一緒に歩かないわけにはいかない下校時。この辺りは東京とは名ばかりの田舎で中学の周辺はうざいほど自然たっぷりだ。右手は鬱蒼とした雑木林、左手は何かの畑。夏には緑の葉っぱが突き出てたけど今は何も植わってない。

空には既に夕闇が迫っていて、沈みかけた太陽がオレンジから淡いブルーへグラデーションを作っている。静かな道だから女子中学生たちの黄色い声はよく響き、アスファルトにはね返ってこだましているようだ。

「わたしんとこはメイクとかそういうの、お母さんがうるさいからなぁ。鞠子んとこもだよねぇ」
「ここはやっぱ明菜ん家じゃない? 何時に親帰ってくるってー?」
「九時ぐらいに帰ります、ご飯は先に食べといて、だって」

 と、携帯メールの画面を見せながら明菜が言って和紗と桃子がやったあとはしゃぎ、いつもはどっちかっていうと口数の少ない鞠子も頬を緩ませている。テンションの高い女子中学生たちの脇を自転車に乗ったおばさんが通り過ぎていって、何をそんなに大騒ぎしてるんだかと言いたげな呆れた視線が四人に注がれる。でも明菜たちはどこ吹く風って感じ。大人にどう思われようがこの人たちはへっちゃらだ。

 今日は誰か一人の家に集まってメイク大会をやるらしい。昨日はクレープ屋さんの店先で恋バナ大会、その前は一時間十円の激安カラオケで下ネタ大会だったそうだ。毎日どこかでナントカ大会が開かれている。

「よっしゃあー鞠子、アイラインの引き方ちゃんと伝授してよね」
「いいよ、でも明菜のすっぴんの目えらく小さいからなぁ。大変そう」
「言ったなー、どうせあたしのすっぴんはヒラメ顔ですよだ」
「ねぇ、わたしたちこれから明菜の家でメイクして遊ぶけど、高橋さんはどうする?」

 和紗が薄い笑みを浮かべながら気遣うように聞いて、その他三人の笑顔が固まる。一応社交辞令で誘ってるけど空気を読めよ、間違っても行きたいとか言うんじゃないよって、無言の訴えがオーラでひしひし伝わってくる。

「……早く帰って家のことしなきゃいけないから」
「そっか、大変だねー。じゃあ他はこれからうちへ集合、ってことで」

 明菜が言っておっけー、と三つの声が合わさる。わたしはそれきり俯いて、ほんとは家まではまだだいぶ距離があるけれどいつもの曲がり角のとこでうちこっちだから、と別れた。

ばいばーい、と元気に手を振る明菜たちはわたしと別れることを心から嬉しく思っているようで、きっとこの後みんなでわたしの悪口を言い合うんだろう。文乃ってマジ暗いよねー、エリサハブりたくて仕方なく仲間に入れてっけどテンション下がるわー、だよねーほんっと何考えてんのかわかんなーい、あんな顔に生まれちゃってカワイソーキャハハ、って感じかな。