「桃子ってさーなんでそんな肌キレイなの? 桃子の顔にニキビできてるの見たことない」

「なんでって別になんもしてないよ、化粧水とか乳液とかみんなお母さんのだし。ほんとは美容液も使いたいんだけど中学生にはまだ早いって使わせてくんないの、うざっ。明菜だって十分キレイじゃん」

「キレイじゃないよー全然、ほらここニキビできてるし、おでこの生え際」

「そんなのちっともわかんないじゃん。二人ともいいなぁ、わたしは部活で真っ黒だから。一度日焼けするとなかなか白くんないんだよね」

 「友だち」ってやつになってみてまもなく気付いたけれどこの人たちの会話はえらい退屈だ。制服の着崩し方、ダイエットとか美容関連、メイクの方法、今やってるドラマとかアイドルとか芸能関係、あとはひたすら男の子のこと。

同じ学校の同じクラスに通う同じ歳の子たちなのに、この人たちの世界にまるで興味を持てない。教室の片隅で輪を作る明菜たちと一緒にいるわたしは、客観的には仲良しグループの一員に見えるのかもしれない。たしかに共に休み時間を過ごし共にお昼を食べ共に放課後帰る以上仲良しグループではあるんだろうけど、この人たちとまともに話したことは一度もない。いつもこうして輪の隅っこで退屈な会話をぼんやり聞いてるだけだ。

「ねぇー鞠子ってお姉ちゃんいたよねぇ? 使ってない美容液とかもらえないのー?」

 桃子に話を振られ、さっきから爪磨きに夢中になっていた鞠子が顔を上げた。この人と明菜たち三人組の間にはなんとなく距離がある。別に嫌われてるわけでも仲間外れにされてるわけでもないだろうけど、明菜たち三人プラス鞠子そしてオマケでわたし、って構造のグループだ。