「こうしてると温かいだろ」

「……うん」


なんだか照れくさくて視線を合わせられない。


「俺の心の温かさが手ににじみ出ている」

「ねぇ、それって私が冷たいみたいじゃない」


口を尖らせ怒ったふりをしてみせると、「あれ、そうだっけ?」ととぼけた口調。


「朝陽、私に構ってばっかりで、大丈夫なの? 友達とか……」


あの日助けられてから、彼は私の世話ばかり焼いている。
すれ違った裕一先輩とすら、たいした会話も交わさなかった。

本当は『彼女とか』と聞きたかった。
でも、ケガをした私に寄り添っていても文句を言わないような"できた彼女"だったら、それはそれでへこむかも。

そんなことを頭の片隅で考えながら、朝陽が自分にとって特別な人になりつつあることに気がついた。