急な階段を上がりきり社の前に着くと、私たちは膝をついて祈りはじめた。

お願い。朝陽を連れていかないで。
朝陽はなにも悪くない。

心の中で何度も何度も繰り返し、ただひたすらに手を合わせる。


それからどれくらい経っただろう。
いつの間にか雨が止み、太陽が雲の間から顔を出していた。


「つぐ、ありがとう。でも、俺……やっぱり逝かないといけないんだよ」


朝陽のその言葉に無性に腹が立つ。
まだ可能性は残っているのに、どうして諦めるの? 

あなたが裕一先輩を殺さなかったように、一度書かれたシナリオを書き直すことはできるの。
ううん。私たちの手で、書き直すの。


「ふざけないで!」


私は彼の頬をバチンと打った。
目を覚ましてほしかったからだ。


「つぐ……」


私がこれほどまでに誰かに怒りを表したのは、初めてのこと。