それから私たちはなにも話さなかった。
それでも、心地よかった。

今の私たちに、これ以上の会話はいらない。
考えていることは同じだから。


やがて神社にたどり着き石の階段の前で止まると、私たちは顔を見合わせた。

彼と初めて会った日は、まだ紅葉が枝で輝いていて、少し落ちていた葉も深い赤色をしていた。

神様は、私がここに来ることをどう思っていたのだろう。
朝陽の大切な場所に、私が足を踏み入れることを歓迎してくれていたのだろうか。

だけど、早紀が私たちを引きあわせてくれたと信じたい。


「行こうか」

「うん」


朝陽と手をつないだまま、ゆっくり階段を上がり始めた。

雨のせいで濡れた落ち葉は滑りやすい。
私たちは一歩一歩踏みしめるようにして歩いた。