早紀をもっと笑顔にできればよかった。
悲しいことを考える隙もないくらい、楽しいことで心を満たしてあげればよかった。
そうしたら……死、なんて選ばなかったかもしれない。
それなら今、私が朝陽にできるのは……。
「朝陽。土曜に遊びに行かない?」
「なんだよ、突然」
「だって、私たち神社しか知らないもん」
あの神社は私たちにとっては特別な場所。
でもたまには違う景色を見て、新しい発見をするもの悪くない。
もっともっと楽しい感情で彼の心を満たして、悲しみや憎しみの感情を和らげてあげたい。
そうしたら、もしかして……裕一先輩への復讐心がなくなるんじゃないかと期待してしまう。
そんなに簡単なことじゃないとわかってる。
でも、どうしても朝陽が傷つける側の人間になってほしくない。
だって本当はこんなに優しい人なんだから。