結城は聞こえていないようで、誰かと電話をしながら歩いてゆく。

セミの声が響く夏の朝、私たちはあまり話もせずに学校に向かった。

校門で結城はそっけなく、

「じゃあまた帰りに」

と去って行ってしまったので、私たちは教室へ。


「おはよ」


悠香が浩太の机に腰かけて言う。


「おはー」


「遅刻ギリギリじゃん」


浩太がひょい、と顔をのぞかせて言う。


「私は早起きなんだけどね」


言いながらあくび。

やっぱ、誰かが部屋にいるって緊張しちゃうのかな。

友季子じゃないけど、寝不足気味。


「今日も、江梨子来てないね」


悠香が表情をくもらせる。


「だね・・・・・・」


江梨子の席を見やって私はうなずいた。

昨日、結城に聞いたことは言わない。


ううん、言えない。