『中央警察署 刑事課

 刑事部長 結城 駿』


「刑事・・・・・・」

中央署と言えば、市内でも一番大きい警察署だったはず。

そこの刑事ってこと?

まぁ、たしかに、鋭い目はそれっぽいけど・・・・・・。

そっちのスジの人かもしれない、と思っていただけに少しだけ安心した。

「そういうことだから」

と言いつつ、結城は手を差し出した。

目線の先には私の持っている財布がある。


「ま、まだ渡せないっ」


「お前なぁ・・・・・・」


あきれたような顔をして、結城は一歩私に迫ってきた。


「だって」


とられてたまるもんか。

財布を体のうしろに隠しながら、私は言った。


「名刺なんて誰でも持ってるでしょ。拾ったやつかもしれないし。ほら、あの…なんだっけ。定期券みたいなの見せてよね」


「アホか。それは警察手帳って言うんだ」


そう言いながら結城は、再度胸ポケットに手を入れて黒い手帳を出すと、投げるように私に渡した。