・・・眠れない。

考えがまとまらないし、隣には結城がいるし。

“忘れたい、という願いほど、強く記憶に働きかけ、その願いは叶わない”

よしこちゃんが言っていた言葉が、思い出される。

結城のことを考えないようにしてきた。

考えると、自分の感情がかき乱される。

自問自答すると、ぜったいにドツボにはまるから。


・・・答えはわかっているから。


必死で自分の気持ちを押しとどめる。

これは恋などではない。

ただ単に、会ったことのない種類の人が現れただけなのだから。

だから・・・・・・。

寝返りばかりうっていたからか、

「眠れないのか?」

と、結城の声が聞こえた。


「・・・うん」


「そうか」


結城が言う。