「そう、人身売買。だから、犯人は松下江梨子をはじめ、拉致した人物は生かしていると思うんだ。そうすると、単独犯ってことはありえない。かと言って、そこまで大きな組織でないことは手紙からもわかるんだ」


結城は手紙の下の方を指さした。

そこの部分を読む。


「“私は本気だ”…ここ?」


結城が私を見てうなずく。


「もし大きな組織なら、このような一人称の書き方はしないだろう。たぶん“我々は”と書くような気がする。かといって単独犯ではないから、犯人は数人のグループで、短期間で人材を集めて、外国に売り飛ばす計画だろうな」


そう言うと、結城は腕を組んだ。


「そんな・・・・・・」


「人身売買の連中は、各自がきちんとした役割を持っていることが多い。拉致する人間、拉致を依頼する人間、そして、売買を取り仕切る人間。最低でも3人の人間がいる、と考えた方がいいだろう」


「・・・・・・」


「よしこさん」


結城がよしこちゃんをまっすぐに見る。


「はい?」


手鏡を置いて、よしこちゃんが答えた。